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これまでの自分なら間違いなく白い目で見られていただろうが、今は違う。少なくとも、外見ではコミュ障のオタクだなんて思われないハズだ。
いかにも声をかけ慣れている風を装って、淳平は校門から出てきたばかりの小柄な男子生徒を「なあ」と呼び止めた。彼が淳平より小さかったからだとか、眼鏡でいかにも真面目っぽかったからだとか、そんな理由では断じてない。断じて。
電柱の陰から顔を覗かせる淳平に、眼鏡の彼は怪訝そうに首を傾げながら近付いてきた。身を隠しているのも、別に人目が気になるからというわけでは断じてない。
「あのさ。この学校に、楠木って一年、居る?」
「ああ……楠木くんなら、隣のクラスですけど」
声を潜めて問い掛けると、眼鏡の彼は何故か「またその話か」とでもいうように小さく息を零した。
I高のトップだけあって、こうして押し掛けてくる連中が他にも大勢居るのだろうか。
……そういえば、「強い」って言ってたよな。
ゴクリ、と思わず喉が鳴る。微かに指先が震えてるのは、恐らく、きっと、いや絶対、武者震いだ。
それに淳平は、何も楠木とケンカをしに来たわけじゃない。肉弾戦なんて、まだ肉体改造中の淳平は分が悪すぎる。もしも殴り合いのケンカなんてことになったら、到底敵うわけがない。
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