side.淳平 2

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side.淳平 2

  ◆◆◆◆ 「……どーなってんだよ」  夕陽に染まる公園に、淳平の長い影と虚しい呟きが落ちる。  時計の針は、あと五分で六時になろうとしている。  華々しい日になるハズだった淳平の『高校デビュー』を、いとも容易く水に流してくれたI高の楠木とやら。その男の顔くらい拝んで、何なら年上の威厳を示してやろうと、淳平は始業式を終えたその足でI高に出向いた。……自身のコミュ障ぶりもすっかり忘れて。  一方的な嫉妬による勢い任せの行動に出てしまった淳平は、いざI高の正門前まで来て足が竦んだ。  着くまでは憎き楠木のことしか頭に無かったが、学校なのだから当然他の生徒たちも居る。むしろ楠木は大勢の生徒の中の、たった一人なのだ。しかもその楠木の顔を、淳平は知らない。  放課後になり、ゾロゾロと門から出てくるI高の生徒たち。日頃見慣れていない学ランに身を包んだ男子生徒たちが、淳平の目には全員イケメンのように見える。セーラー服の女子に至っては、眩しすぎてまともに見ることすら出来なかった。  別の学校というだけで、この異国感は何なのだろう。  ───いや、落ち着け。     
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