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顔をあげると、母ちゃんの向こうに兄ちゃんが立っていた。
体の脇に握りしめたげんこつが怒りでぷるぷる震えていた。
「にいちゃん・・。」
「ちー。まっとけ。にいちゃんがそいつぶんなぐってやる!」
「こらっ!ケンジ!やめんさい!
そんな図体のでかい奴が小学生殴るとどうなるか、わかっとるだろうねっ!」
いつもは静かなかあちゃんが、大きな声で叫んだ。
その迫力に兄ちゃんの足が止まる。
かあちゃんはちーの顔を両手で挟んで、にっこりした。
「おなごがこんなことで泣くこたぁない。
ちーがおっきくなっておかあさんになったら、
もっともっとがんばらにゃならんことたくさんあるからね?」
にいちゃんがどかどかと足音を立てて、ちーのそばに立って
両足をふんばってとても怖い顔をして見下ろした。
「ちーは可愛い女の子だ!誰が何と言おうと、俺はそう思う!」
かあちゃんがあきれたようににいちゃんを見上げたが
やがて声を立てて笑い出した。
「そうだそうだ。ちーは可愛い女の子だよ。」
にいちゃんにぶたれるかと思ったのに、
ちーはかあちゃんと一緒につられて笑ってしまった。
涙と鼻水を垂らしながら、きっと今全然可愛くないだろうなぁと思いながら。
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