第一章 浅草

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お寺の目の前を通りながら、人力車あるあるや小粋なジョークを並べられて、終始ニコニコとしたイケメンにつられて私まで頬が緩んでしまう。 素晴らしい、人力車。人力車のお兄さんが職場にいたら、きっと惚れてしまう。 「お姉さん、ここは俺の穴場なんです!」 「穴場?」 少しだけ停車した人力車から見わたした場所は、綺麗な緑と小道。その奥に浅草の派手な赤色が見えて、綺麗な青とコントラストを広げていた。 「きっと、デートで来たら素敵です。」 「……行く相手がいればね。」 私がつい卑屈に返すと、お兄さんは屈託のない顔で言った。 「大丈夫ですよ! お姉さん、とっても素敵な笑顔だし!」 お兄さんの口ぶりに、思わす胸が高鳴った。 そ、それって。なんて期待をしていると……。 「もし彼氏が出来たら、また俺の人力車に乗ってくださいね! これ、二人は余裕で乗れますから!」 って、そんなもんですよね! 期待した自分に赤面しながらも、なんのことやらと人力車は進んで行く。 一周盛大に案内してもらって、あっというまの一時間。 私は大満足で元の場所に戻ってきた。 少し値段が張るのはご愛敬だが、人が引いて案内してくれるすばらしさと風を感じられる心地よさはタクシーじゃ味わえない。そして何より、お姫様のように扱われる楽しさも、だ。     
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