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「なににされます?」
「ハマグリとビールで!」
メニューに大きく書いてあったハマグリ6個入りを頼んで、ビールを待つ。
ジョッキで来るかな?と思ったら、ハズレのアタリ! 大好きな瓶ビール!
自分で小さなグラスに注いで、泡が溢れそうになるまえにグラスをくちに付けた。
しゅわしゅわと喉を走る炭酸、苦み。その後の麦の香りがふんわり広がって……。
お、美味しい!
「はい、お待ちどうさま!」
ビールを飲んでいると、早速浜焼が来た。良く焼けて醤油の香ばしい香りが出ているハマグリ。だけど、出てくるの早くない?
「あの……。こんなに早いもんなんですか?」
「いやいや、あっちの席の人らが、自分らの焼いてる分先にあなたに出してあげてって。」
指さされた方には、さっきの白塗りの役者さん。
微笑んでビールを掲げている。正面からみるとこんなに美しいんだ、なんてびっくりするのはつかの間、会釈をした後にビールを私もあげて、エアー乾杯!
ハマグリはひとつ口に含むとじゅわっと広がって、その弾力と塩気でビールがしっかり進む。
6個なんて多いかな? と思ったけど、そんなことはない。これなら何個でも入っちゃう。
貝本来の磯の香りと食感、奥にある甘味……。浜焼、最高!
プレミアムフライデーも、たまにはいいものだ。ビバ! プレミアムフライデー!
なんて、自分は単純だなと思いながらも酔いが回る頭の中で考えていた。
よし、近場を沢山旅しよう。やめるまでに。
なぜそう思ったかはわからない。だけど、最寄り駅から40分の場所でも、ブラックフライデーがプレミアムフライデーに思えるほど気持ちの変えられるスポットがあったのだ。
先のことはわからないが、もしかしたら、面白い何かがあるかもしれない。
こうして私の「東京道中膝栗毛」は始まったのであった。
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