1.出会い

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そろそろ授業が始まるころだな、と私はブランコに乗りながらそう思った。 ブランコは徐々に勢いを増していく。上から下に、下から上に。目の前の景色が移り変わっていくのを見て、私は再びとある事を思った。 ……授業サボったの、お母さんにバレないかなぁ。きっと連絡はいくに決まっている。となると、やはり怒られるのは避けられないだろう。 まぁ、こうなったのは自分のせいだから言い訳のしようがない。それにもし事実を述べたとしても、それも怒られる要因になるから実質、袋小路だ。 ブランコの上で屈伸しながら、さらにスピードを上げる。おかっぱぎみに揃えられた自分の髪型がバサッと大きく揺れた。 徐々に勢いがついていき、視界が地面から空へと切り変わった時ーー体を投げ出して、私は文字通り空中を舞った。 土ぼこりを上げながら、10点満点の着地を決めてみせる。私は心の中でドヤ顔をしてみせると、腰に手を当てて大きく深呼吸した。 「イイ天気だなぁ」 言いながら、あらためて空を見上げる。 今日は絶好の晴れ模様。夏も終わりに近づこうとしているが、まだ少し湿度は高い。それでも、陽の高くない早朝だと過ごしやすさは抜群だ。 うん、これは学校をサボって正解だったかも。平日に学校をサボる。その贅沢な状況を経験してみたいと考える学生が果たして何人いることだろう。 それを私はこうして有言実行している。圧倒的優越感。しかし、同時に少しやってしまった感はある。 わりと今まで勢いだけで生きてきた私だったが、それでも学校をサボるなんてことはこれまで一度もなかったからだ。
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