1人が本棚に入れています
本棚に追加
ネットで知り合った僕たち6人は噂のある廃屋に集まっていた。僕たちはネットで知り合い、実際に会うのは今日が初めてだった。コミュニティサイトで僕はある条件を満たす仲間を募集した。そうして今6人が顔をあわせているのだ。
「自己紹介をしよう。まずは僕から」
募集をかけた手前仕切っていかなくてはならない。そういうのは得意ではなかったが、仕方がない。
まだ昼間だが、僕たち以外は人気はない廃屋である目的を達成しなくてはならないのだ。
「僕の名前は田中太郎。ハンドルネームもタナカタロウだ。君たちに来てもらったのは他でもない。魔法を使える僕たちが異世界で魔王を倒す冒険の旅に出るためだ」
僕の言葉にみんながうんうんとうなずいた。少し気持ちが良かった。
「では、僕の魔法をお見せしよう」
そう言って廃屋に落ちている朽ちた板切れを目の前に置いて、「燃えろー」と叫んだ。
すると板切れが瞬く間に燃え盛った。他のみんなが驚いて退いた。
「本物だ」
長身の男がつぶやいた。だが、すぐに板切れは水浸しになった。誰かが水をかけたのだ。みんなが一人の女性に注目した。
「すいません。危ないと思ったもので」
僕と同じ高校生ぐらいの女性が申し訳なさそうに頭を下げた。それにしても水はどこから持ってきたのだろうか。不審に思っていると女性は「実は」と話し始めた。
「わたしのハンドルネームはアナスタシアと言います。今使ったのは水を出す魔法でまだこれしか使えないんですけど、すいません」
そう言って頭を下げた。僕を含めて周りは色めき立った。
「すごいですよ。火の魔法に水の魔法ですか。すごいです」
20代の男が絶賛してくれて僕とアナスタシアさんは恐縮した。その男の横にいる30代と思われる髭もじゃらの男はほとんど無言だ。アレスタシアさんのそばにいるメガネをかけた同級生っぽい女性もほとんど口を開かない。異世界の扉が開く前に急いで自己紹介を終えなければならないと思った。
この廃墟には一つの都市伝説がある。
魔法使いが出会う時異世界への扉が開かれるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!