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「付き合っていられん。放せ、騎士」
「はいはーい」
「はいは一回だろう馬鹿者」
「はーい」
どちらも好みのイケメンではないけれど、こういう男の人同士の気安い関係は、見ていて微笑ましい。
一王がさっさと厨房に戻ってしまうのを二人で見送ると、騎士はいつもの軽さをちょっと控えめにして、こっそりと私にささやきかけてきた。
「一王に怒られちゃった?」
「はい…少しだけ。でも、私が悪かったんです」
「そうなの?…一王は見た目怖いけど、本当は優しいやつだから、誤解しないでやってくれると嬉しいな」
「誤解なんて、そんな!一王さんは頼りになる、とてもいい方です」
「……そこまで褒められると、ちょっと悔しいね」
嫉妬しちゃうよ、と軽くウィンクする。さすが、完璧な仕草だ。ファッション誌の表紙を飾りそうなほどに。
と、騎士は私の目の前に広げられたスケジュール帳をちらりと見ると、なるほどと得心したように頷いた。こういう察しの良さも、彼の魅力の一つである。
「シフトで悩んでいたんだね」
「はい…」
「確かに、今月はそうびちゃん、頑張って働いてたからなぁ」
真面目で可愛いから、店長もつい頼っちゃうんだろうね、と片目をつぶってみせるそのさまも完璧。もはや彼の美貌に限界はないらしい。
私が「可愛いなんてそんな、」としっかり謙遜すると、すかさず「可愛いよ。そこいらの女なんて、メじゃないくらい」と腰に来る、深く甘い声で口説き始める。プレイボーイって、本当に恐い。私は確かに、キサキも英児も一王も騎士も好みのタイプではないけれど、でも男慣れをしているというわけでもないのだ。こういう時は困ってしまうので、素直に恥ずかしがることに決めている。そうするのが一番清純そうで可愛いし、可愛い子が魅力的に見えると思うから。
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