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気がつけば見知らぬ土地にいた。
行ったことはないが富士の樹海とかこんな感じなのかな?と健は思う。
やたらとうねうねとした樹木が空を覆うほど密集していた。
葉は黒く、よく見ると幹にはギョロリとした目玉が無数についていてしかも動いている。
「……キモッ、つーかどこよここ」
ついさっきまでは自宅のボロアパートにいたはずである。
正確にはアパートの共用通路か。
「御手洗健さん。アナタにはこの世界に勇者として来てもらったのです!この世界、ヴィルドアは今危機に晒されています。2000年前にアナタと同じ異世界の勇者イトーによって地底深くに封じられていた邪神が蘇り邪神の眷族である魔族が人の国を襲っています。またごらんの通り邪神の魔力によって自然界の樹木や獣が魔物化し、これもまた人や魔物化していない動物を襲っているのです!アナタにはこの可憐で可愛く気高い天使であるラスティナちゃんが超強力な魔法やスキルを与えてあげますので、ぜひ頑張って邪神を再--」
「だあぁ!長い長い長いって!」
長すぎて途中で欠伸が出たわ。
ふあ、と大口を開けながら、健は突然目の前に現れたかと思うと長口上を始めた中二病少女を腕をぶんぶん振って遮った。
ってか、可憐で可愛く気高いって!普通自分で言うか?
天使とか……。
「--ん?」
改めて少女を見上げると、その背中には確かに天使っぽい真っ白な羽根が付いていた。
緩やかに羽ばたく様は本物らしく見える。
どういった原理かわからないが羽根は周りに淡く白い光りを纏っていて、暗い木々の隙間を照らしている。
足下に視線を落とすと少女の足は地面から10センチほど浮いていた。
その地面は落ち葉や木の根で土が隠れた状態だ。
当然同じ場所に立つ健の足下も非常に足場は悪い。
とにかく逃げ出したい気持ちはあるが、止まっている理由には下手に走ればすぐに足を捕られて転けるという予測があるからでもある。
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