〔2〕ある患者――桃井杏

2/2
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 だが、そうこうしていくうちに、少しずつではあるが、病気について理解できるようになっていった。要はマンガに使えるくらいの情報が集められればいい――わたしたちはそう開き直って取り組んだ。  そんなことがあったので、わたしは、医者という職業や職場環境について、巷の人々よりは理解があるほうだと自負している。  だから、診察中、彼らがぶっきらぼうな口を聞こうが、こっちが病状を話している間、イライラと貧乏ゆすりをしていようが、気にしない。1時間も待たされたのに、3分しか診てもらえなくても「仕方がない」と思う。パソコンの画面ばかり見て、こちらの顔なんて見ようとしなくても……さすがにこれは気になるが、「診断には必要ない」と言われれば、「ああ、そうですか」と引き下がるつもりだ。  けれど。  わたしはモノではなく、人である。  理解するにも限度がある。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!