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それが余計に兄弟の好奇心を刺激して、また兄は慣れた感じで白いリンゴを収穫してくると、今度は弟が兄に言います。
「兄ちゃん!おいらにそれ貸して!?」
「いいけど、なにするんだよ?」
「えへへへへ」
ニッコリ笑う弟は、急いで部屋に戻るとトコトコと手に何かを隠しながら持ってきた。
「じゃーん!これこれ!」
「なんだよそれ、ポケットカラーペンなんて持ってきて。」
「これで赤色に塗ったらどうなるかな?」
「は?おいおい、リンゴにペンで色付けても味は変わんないだろ?」
「じゃあ、やってみようよ!」
「お、おい!人の話を聞いているのか!?」
兄の話しを聞いているのか、聞いていないのか、弟は飛び切りの笑顔でリンゴに赤色を描いていく。
「できた!」
そう言って見せたリンゴはとてもペンで着色したような色合いではなく、とてもとても美味しそうな本物のリンゴのように見えた。
兄は口の中に涎が溢れてきて、たまらず弟からリンゴを受け取ると一口かぶり付いた。
「う…うまい!!!!!!」
今まで経験したときのないリンゴの芳醇な香りと甘みが口いっぱいに広がり、兄は続けざまに二口目を食べようとしたとき、弟の潤んだ瞳がこちらを見つめているのに気が付くと、リンゴから口を静かに放しながら弟に差し出した。
弟は喜び、一口食べると更に喜び飛び跳ねる。
そして、一気に全部食べてしまった。
芯だけ残ったリンゴを見つめ、弟は兄の分まで食べてしまったことを悔やみ、今まで喜んでいた顔が急に悲しみにであふれていくが、そんな表情をみた兄はこう告げる。
「美味しかったか?そりゃよかった!今度また実ったら兄ちゃんにもまた一口くれよな!」
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