45人が本棚に入れています
本棚に追加
/319ページ
服を掴もうとするので慌てて彼の手を解いて、ご飯どうするのと尋ね直す。
「……いい。今日はアンジーと一緒に帰るから」
「じゃ後で何か持たせてあげるから」
「よかった、あたしだけじゃろくに食べてくれなくて……」
「ああ、そうか……で、その話をしに来てくれたんだな?」
「そうなんです。あたし昨日ロンから少し聞いて……ね」
彼に、話をするよう促す。一瞬だけ目が合った。
医者の診察を受けたこと。何かの病気であるという診断をされたわけではないが、生活の乱れが心を乱していると言われたこと。
経過観察として、食事や睡眠などの改善を心がけてみるように言われたこと。
彼自身は下宿を続けたいこと。
彼は淡々と説明した。――彼女にひしと抱きついたまま。話すので動く唇が時折頬に触れた。
両親は静かに耳を傾けてくれていた。
しかし――アンジーがボストンに帰ったらどうするんだ、と聞かれる。
彼女はどきりとした。「下宿を続けたい」のも、自分が帰省している間だけだろうと、自身も思わなくはなかった。
「……なんで」
彼はそうこぼしたっきり話をしなくなった。
すすっと彼の唇が自分の首筋に触れる。顔を伏せてしまったのだろう。
そっと横を向いて、視界に入った彼の手をきゅっと握った。小さく震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!