ボストン茶会事件

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「いいでしょ? 一緒に帰ろ……ね……?」 「一緒に行ってないもんが帰れないんだよ」  つい屁理屈を言ってしまって彼女がくすっと笑い出す。 「じゃあ一緒に行く?」 「だめだよ」 「何でよ」 「留守番しろよ」 「やだ、大学に行くから一緒に帰る。ていうか、行く時は別々ってだけで、その場合だって一緒に帰ることは成立するんだからね」 「……」  応戦する気力が殺がれてしまったので、黙って彼女の左手を取った。  すりすり、と撫でてやる。 「……じゃ、ね、ロン、後でね。用事終わったら連絡してね?」 「……ん」  新婚の夫婦さながらのやり取りをしてきて、正直疲れている自分がいた。  甘えてくれる分には全く構わない。その方がいじらしくて、自分の本能がくすぐられるから。今は性欲がなくても、これだったらそのうち取り戻すだろう。  けれども疲れる。  彼女のことが大好きな故に、疲れる。 ――人を愛することは、これほどまでに自分をすり減らすことなのだろうか。  今日研究所に来たのも、本当は仕事の用事などではなかった。  自分の研究個室のドアは入構証が鍵になっている。それで開けることで、本人が入室したことが記録されるのだった。     
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