第二話 A friend to all is a friend to none.

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彼女のおかげで勉強に集中することができ、気付けば日も暮れ外は暗くなっていた。 「・・・もうこんな時間か。ありがとう、澪標さん。君の説明、分かりやすくて良かったよ」 「いえいえ、感謝されるほどのことじゃないですよ」 「けど、澪標さんは自分の勉強は進められなかったよね、ごめん」 「あ、気にしなくて大丈夫です。それに・・・、八重葎くんと、友達と勉強したの初めてで嬉しかったですし・・・」 ・・・友達、か。彼女は僕のことを友達と思ってくれているのか。それは本心なのか、それとも・・・・・・考えたってしょうがないな。彼女は僕に勉強を教えてくれた。それは紛れもない事実じゃないか。今はそれだけで十分だ。しかし、貸しを作ってしまうのも個人的にはモヤモヤするな。それなら・・・ 「澪標さん」 「はい?」 「これ貸すよ・・・ほいっ」 彼女に向けてカバンの物をいくつか投げると、彼女は少しあたふたしながら全部キャッチした。僕が彼女に投げたもの、それは英語の単語カードだ。 「これって・・・」 「見ての通り単語カードさ。今度のテスト範囲の分全部カバーしてる」 「で、でも、これ八重葎くんも必要なんじゃ・・・」 「いや、その単語は全部暗記したしから大丈夫。それに・・・今回のお礼ってことで使って欲しい」 彼女は単語カードをじいっと見つめ、 「ありがとうございます!早速家で使いますね」 と、僕の目を見て感謝の辞を述べた。そんな時、僕らの下校を促すかのようにチャイムが校内に鳴り響いていた。 「あっ、私帰らなきゃです。それではまたっ」 彼女は机の上の物を急いでカバンに入れ教室を出ようとしていた。 ・・・僕は彼女との関係をこれで終わらせたくない。一緒に昼食を食べたい。一緒に勉強をしたい。そう思った僕は咄嗟に彼女を教室を出ていくところで呼び止めた。 「あ、あのっ!」 彼女は僕の方を振り向いた。 「ま・・・・・また、明日」 「は、はいっ、また明日、です」 彼女は最後に笑ってそう言うと、タタタっと廊下を駆けていった。 教室に一人取り残された僕は一人考え込んでいた。 ・・・違う。もっと言いたいことが、伝えたいことがあったのに。圧倒的に言葉足らずだ。なんでこういう時に限って言いたいことを言えないんだ。本当はもっと・・・。 ・・・・・・まあ、いいか。言いたかったことはいつか話すとするか。 「は、はいっ、また明日、です」 例えば”明日”とかな。
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