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第三話 The most I can do for my friend is simply to be his friend.
今日の天気は生憎の曇天。こうも曇ってしまうと、自分も心なしかやる気が出てこない。どうやらそれは教室の空気も同じようだ。僕は一人でに梅雨入りの予感を感じていた。今日傘持ってきてないんだけど。
「お、おはようございます。八重葎くん」
「あ、ああ、おはよう、澪標さん」
・・・ビックリした。人から挨拶されたことなんて久しぶりだったから。
驚いて返答した僕を見て、澪標さんも少し体をビクッとさせていた。彼女は一呼吸置いた後、自分の席に付いた。
「・・・あの、八重葎くんはもう決めちゃいましたか?」
「え、何が?」
「あの、あれです、林間学校のグループです」
なるほど。合点がいった。もうそんな時期かと物思いに耽る。
林間学校とか修学旅行とかそういうのはあまりいい思い出がない。なぜならグループ作りがあるからだ。
「何人グループだっけ?」
「四人くらいですね」
おいおい。うちのクラス41人じゃん!絶対あぶれるわ!
心の中で嘆いた。
・・・澪標さんはもう決めてるのだろうか。いや、そんなはずはない。彼女が誰かと話しているところなんて僕は見たことない。
「澪標さんはもう決めてるの?」
「あ、はい!決めてますよ・・・」
なん・・・だと。
予想外の答えが返ってきたぞ。
「あ、ああ、そうなんだ。僕は誰と組むか迷ってるかなー」
僕は少し悔しかったので、強がった。
ぶっちゃけ話し相手も澪標さんを除けば、四方くんくらいなんだが。
「あ、あの、よかったら一緒のグループになりませんか?」
「あれ?決まってんじゃないの?」
「あ、はい!最初から八重葎くんと一緒のグループって決めてましたから」
・・・不意打ち。この子はほんとずるいな。
「い、嫌ならいいんですけど・・・」
「・・・ううん、いいよ。こんな僕でよければ一緒に回ろう」
遠慮気味な彼女に僕は精一杯の笑みを浮かべた。
ぎこちなくないだろうか・・・。
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