第1話 何かがある山

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これは私が中学生の夏のお話。 仲のいい子達と夜、近所の山へ登りました。 その山はそれほど高くはなく、頂上までの道も1本で迷子になる心配もありません。 あの時は10人くらい集まって、みんなで頂上にある鐘を鳴らしに行きました。 上り道は何事もなく、みんな揃って頂上の鐘を鳴らしました。 冒頭にも書いたように、昇り降りできる道は1本。 ただ、おかしなことが起こったのです。 話しながら降りてきたし、1本しかない道。迷うはずもありません。 でも、下りきって気がついたのです。 数人、いないことを。 しばらくはただ遅れて降りてくるのだろうと思っていました。 でも、5分経っても降りてきません。 不安になった時、電話がかかってきました。 「もしもし?今どこにおるん?」 「あんな、迷子になったんじゃが」 「え?なんでなん?」 「分からんのよ、道がな、ないんよ」 「道がない?」 1本しかない道が、どうしてなくなるのか。 先に降りた私たちには全くわかりませんでした。 結局またみんなで山に登り、迷った数人を見つけました。 その子達は、ごくごく普通に道の真ん中にいたのです。 私たちが声をかけると、信じられないというような顔をしていました。 「道あるじゃん」 「でも、ほんまになかったんじゃって!みんなどっから来たん!?」 「どっからも何も、普通に上がってきたんじゃけど…」 あれこれ話しながら、今度は全員が山を降りることが出来ました。 ただ、その時… 頂上の鐘が鳴ったのです。 私達は、誰ともすれ違わなかったのに。 道は、1本しかないのに。 みんな怖くなって慌てて帰りました。 数年後、バイト先のカメラ好きな人にその話をする機会があり、こういうことがあったんですと言ってみると 「あぁ、あそこの山は何かあるよね。自分カメラ持って何度か行ったけど、撮った写真は半分だけ真っ黒だったり、そもそもシャッターを切ったのに何も写らなかったり、カメラの充電して行ったのに電源が落ちたりしたんだよ。」 私は今でも、あの日を忘れられずにいます。
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