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俺がまだ医学生だったころ、親父たちは不慮の事故に遭い、夫婦そろってこの世を去った。
苦しくも、俺たち二人はともに手を取り、この世の中を乗り越えて生きてきた。
たった二人だけの兄妹。この世に存在する二人だけの兄妹で生き抜いてきた。
その妹が突如姿を消し去った。そして、消息不明のまま俺は一人っきりで生きてきた。いや、生かされていたんだろう。
コートのポケットに忍ばせていたペンダントが淡い光を放つ。
その光は暖かく、そしてとても懐かしい光。
こみあげる想いがあふれ出す。その俺の前に現れた一人の女性。
似ていた。
彼女に。妹に……
その女性は、俺の愛する人に……似ていた。
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