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毎年十二月二十四日の夜八時に、彼女はこの公園にその姿を表す。それを知る者はこの俺以外誰もいない。
毎年彼女とはこの公園で同じ日に、同じ時間にその姿を確かめるように俺たち二人は出会う。
もしかしたら俺が一方的に彼女に会おうとしているのかもしれない。
3つ下の彼女。その容姿はまだあどけなさが抜けきれない、あのときの幼さを感じさせる。
「ところでこの一年元気でいた?」
「それくらい今の俺を見ればわかるだろ」
コートのポケットからタバコを取り出して一本火をつけ軽く煙を吸い込む。
「ああ、今年も止めれなかったのね。た・ば・こ」
「ふん……」
「まっいいかぁ、あなたから煙草まで奪っちゃうと何にも残んなくなりそうだし」
「随分と言う様になったな」
「あら、そうぉ。私だって少しは成長しているのよ」
「そうなんだ」
「なんだか呆れているみたいね」
「そうでもないさ」
「本当に?」
「本当さ」
彼女はすっと立ち上がり、目の前のブランコに座り、ゆっくりとこぎ出す。
ギシギシと錆びついた鎖とフレームの支えの音がする。
その音は少しづつギーコ、ギーコとき刻み小気味良い音に変わる。
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