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俺は矢代巧外科医だ。
だがこの時代の人間ではない。それを言うのなら俺はこの時代の、この世界の人類ではないというのが正しいだろう。
俺はある日を境に自分のいた世界を捨てた。
そう、すべてを俺は捨て去って今、ここにいる。それは彼女にまた出会うために、もう一度俺のこの腕の中で彼女を抱きしめてあげたかったからだ。
彼女は、……俺と唯一血の繋がった妹だ。
妹だった、というのが今は正しいだろう。
二千十八年、十二月の二十四日。彼女は突如その消息を絶った。
俺に残されたのは小さな水晶のペンダント。彼女がいつも大切に身に着けていたペンダントだった。
一年がたち二年が経った。以前妹の消息は不明のまま、月日は流れ五年もの歳月がすでに過ぎ去っていた。
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