人間を見ている

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きっと両親にこんなことを言えばそんなことはないといってくれるだろう。そもそもこんなこと私は口が裂けても言えないが。そうだとしたらこの気持ちはどこに吐き出せばいいのか自分でもわからなくなってくる。 でも高校生くらいになってからはこんなことはどうでもよくなってきた。こんな抽象的なこと考えたってどうにもならないし。自分自身でもどうでもよくなってきた。 私は電車で一時間かけて学校についた。中学生の時に比べると移動時間が少し増えたが、慣れてしまえばどうってことなかった。私はいつも通り自分の教室に向かって歩いた。 私のクラスは二年一組なので校舎の一番左側にある。私が教室の扉を開けると、五人ほどの女子生徒が教壇を挟んで話していた。おはようと言うと彼女達は一斉に私の方を振り向いて、私に話しかけてきた。 「美里、あいつ学校に来たよ」 そう言った彼女は私の席の方を指さした。私は指がさす方向へ目をやると。見知らぬ男の子が座っていた。いや、よく見てみると彼は若林龍也だ。髪があんなに伸びたのか。 若林龍也は私の一つ前の出席番号で不登校だった生徒だ。私のクラスは席替えをしない。担任が席替えをしない方が何かと楽だからと言って、今も四月のまま同じ席で過ごしている。  
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