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これは自由を忘れた街とそこに住む少年たちのお話。
大自然の中に「キャストタウン」という街があった。
この街は自然に囲まれており、街中を木々が覆っている。
キャストタウンは決して恵まれた環境では無かったものの、住民たちはそれなりに楽しく暮らしていた。
少ない物資や食材に困ることも多々あったのだが、それを補う為に森の外に行こうと考える者は誰一人いなかった。
王族が分け与える少量の物資や食材を住人達で分け合い、助け合っていた。
そもそもこの街の住人には森の外に出ようという思考がないようだ。
子供たちはこの街で少しでも裕福に暮らす為に学校へ行き、大人たちはこの街で裕福に暮らしていける方法を教える。
それがこの街での当たり前となっていた。
いい成績を取ればそれだけいい仕事にも就ける。
そうすればいい給料をもらい生活が豊かになる。
子供たちは物心着いた頃からそう教え込まれていた。
いつもの様に学校へと通うノエル。
ノエルはお気に入りのオーバーオールを着て、履き馴れた茶色のブーツが地面を鳴らす。
そして父から譲り受けた大切なハンチング帽をかぶり、家の東にある学校へと向かう。
ノエルの家は南に位置する住宅区にあり、東へ抜けると開発区がある。
学校はこの開発区にあり、平日は毎朝ここに通うのが決まりだ。
住宅区には朝から忙しそうに洗濯をしている人や、ノエルと同じように学校へ行く人。
工業区へと仕事に向かう人もいれば、農業区の方に買い物に行く人まで様々だ。
住宅区の朝はこうして忙しなくやってくる。
大通りを通ると、多くの人が行き交うのでノエルは比較的には人通りが少ない道を選んで登校していた。
ノエルは立ち並ぶ住宅の脇道を抜け、いくつも折れ曲がった小道を通るのがお決まりなのだが、ここを通る理由がもう一つあった。
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