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「ピー、ガガガガガガ」
機械から耳障りな高音が放たれ、それに舌打ちをするルーク。
手に持った機械を数回叩くとそこから誰かの話声が聞こえてきた。
「次の船はいつだ?」
声の主は年老いた男の声。
「三日後の夜で御座います」
その質問に応えるように発したのは若々しい男の声。
部屋の中には老いた男と若い男の二人だけのようだ。
ルークはギルに頼んでおいた盗聴器を王族の住む屋敷の一室に仕掛け、その会話を盗み聞きしていた。
月に一度、農業区で取れた作物たちを王族の住む中央区に届ける必要があったルークは、その時にこっそりと屋敷に忍び込み、とある一室にギル特性の盗聴器を仕掛けることに成功していた。
時折雑音が混じり、聞き取りづらいところがあるが即席にしては十分と言っていいほどの出来だ。
「やっぱりか」
ルークは二人の会話から、キャストタウンの真相に近づいていた。
外部と交流があるとすれば必然的に犯人は王族に行きつく。
なぜならこの街の住人はみな、森の外には出たがらないし、そのような悪知恵を働くことはない。
働きもせずに裕福な暮らしをしている彼らのカラクリを暴いてやろうとルークは鼻息を荒くしている。
「それで? どうする気だ?」
隣に座るギルが問いかける。
ギルもまたこの街の謎を解明する為、なによりもルークの為に協力していた。
ルークとは違い落ち着いた表情でルークの動向を気にしている。
「今から屋敷に行って全てを白状させる」
「それで?」
「それで、街の人たちがもっと豊かな暮らしが出来るようにする」
「どうやって?」
「それは王族がなんとかするんだろ?」
ギルの質問攻めにルークは少し困った表情を浮かべる。
黒幕が王族と分かったが、それが分かったところで何の解決にならないことをギルは知っていた。
それ故にルークが無策で乗り込もうとするのも阻止できた。
「街のみんなにカラクリを明かしても何の解決にもならないよ」
「じゃあ、どうすれば」
「そうだな。まずは現地視察にでも行ってみようか」
ギルは不敵な笑みを浮かべ、三日後に王族たちの後を追うことを提案した。
特に策のないルークはギルの提案に素直に頷く。
ギルは王族たちと外部がどんなやり取りをしているのか、それを知る必要があると考えていた。
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