9人が本棚に入れています
本棚に追加
船の仕組みを見る為に、森の中をゆっくりと進み近付く二人。
荷を積んだ王族たちは行きと同じように一列の隊列を組み、先ほどの洞窟へと向かって進む。
そんな中、若い男と船の乗組員らしく男のやり取りが聞こえてきた。
水が押し寄せるザーという音に紛れて聞こえづらいが、ルークは耳を澄ませ、その会話を聞き取ることに集中する。
「例の物は?」
船の乗組員が尋ねると「既に船に積んだ」と渋い声で言う。
「そうか。ならまた頼むぜ」
男は満足そうな声でそう言うと、船の中に乗り込んで行く。
会話が終わったその男は、洞窟へ荷を運ぶ隊列の一番後ろまで歩を早める。
男が目の前を横切る瞬間に二人はさっと森の茂みに身を隠し、男が去るまでやり過ごそうとしたが、ガサガサとギルのマントが木の枝に引っかかり音を立てる。
「誰だ!」
茂み向かって叫ぶ男の声は、王族の部屋を盗み聞きした時に話していた若い方の男の声に似ていた。
さっきの会話からは分からなかったが、この近さでならルークとギルはすぐに確認することが出来た。
木の隙間から覗き込むルークは、近寄ってくるその男と目が合った。
その目は獲物を睨み付けるような目で、だが今すぐに取って食おうとする様子でも無かった。
「ロイ! そこに誰かいるのか?」
近寄る男に王の一人が問いかけた。
王族に仕えるロイという男は、王の身の回りの世話から住人の管理、街で起こることなど様々なこと任されている。
最初のコメントを投稿しよう!