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第二章 真実
「これがこの街の秘密とオイラが外に出たい理由さ」
「なら王族たちがこの街を支配してるってこと?」
「本当かは分からないけど、これにはそう書いてある」
ヴェンの手にはルークが書いた日記があった。
その日記からこの街の秘密を知ったヴェンは、街のみんなに外に出ようと問い掛けていた。
「だけどルークって人って……」
ノエルが気まずそうに体をもぞもぞさせて言う。
ヴェンはノエルが何か言いたいかすぐに理解したのだろう「ああ、そうさ」と被せるように答えた。
「オイラの父さんは災悪のルークさ」
妻と子供を残し、ルークが街を出た後に起こった悲劇からそう呼ばれるようになったのだ。
街は天災に見舞われ、作物は全滅。
食べ物は減り、街の住民は衰弱しきっていた。
王族はここぞとばかりに恩を売り、住民たちの心を掴んだ。
だが、元々体の弱かったヴェンの母は、その環境に耐える事が出来ず、そのまま息を引き取ったのだ。
ヴェンの口から語られる事実はノエルにとって、とても受け入れがたい真実でもあった。
「でも気にしてないさ」
ヴェンは明るく振る舞う。
だが目の周りは赤く腫れ、瞳には大きな雫が今にも落ちそうになっていた。
「オイラの父さんは誰よりも勇敢だったんだ! それをオイラが証明するんだ!」
ノエルもまた、ヴェンの熱い思いに心を突き動かされていた。
この街で生まれ、この街で死んでいくのだと思っていた概念が崩された。
ヴェンが街の住人に外の楽しさを伝えようとしたのは、外に出ることに何の弊害も無いことを伝えたかったのだろう。
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