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見たこともない表情で叱られたこと。
本当は外に出たいという気持ちはあるが、自分の中で決心がついてないこと。
まだ子供の自分たちだけでこの問題が解決できるのか。
喋りだすと不思議なくらい次の言葉が出てくる。
考えるよりも先に口が動き、思った事が次々と声となってヴェンの元に届く。
ヴェンはノエルが喋っている間、横から口を挟むことはなかった。
時々相槌を打つ程度で、肯定も否定もしない。
ただ隣に座って、じっとノエルが話し終えるのを待っていた。
ノエルは一通り自分の気持ちを口にした後「これが僕の気持ち」と話の終わりを告げた。
ヴェンは「分かった」と小さく呟くと、ゆっくりと立ち上がりお尻についた砂を払う。
ノエルに背を向け「巻き込んで悪かった」と言うその背中は、どこか寂し気で申し訳なさそうにも見えた。
「うん」
ノエルの声は、ヴェンに聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさしか出ていなかった。
ヴェンが靴を擦りながら去って行く音だけが二人の間に虚しく響く。
すると突然物凄い音を立て、突風が街を襲う。
「ビュオオオ」唸るような音は、一瞬で街を通り抜け、街中の物を飛ばして回る。
「うおッ」
ヴェンは頭を抱えて小さく丸くなる。
砂埃がひどく、とても目を開けていられる状況ではない。
それはヴェンの体に打ち付けるように吹き荒れ、ノエルもまた同じように顔を伏せその場を凌いでいた。
「あッ!」
ふとノエルが声を上げる。
ヴェンは声のする方へ「どうした!」と尋ねるが返事が無い。
状況を確認しようにも砂埃でとても目が明けられる状態ではなかった。
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