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だから今日の授業もヴェンの隣には誰も座っていない。
これがこの学校の当たり前になっていたのだ。
授業中、物凄い勢いでノートに何かを書いているヴェンが気になって仕方ないノエル。
先生が黒板に打ち付けるチョークの音よりも、ヴェンの鉛筆が勢いよくノートの上を走る光景の方が見ていて興味が沸く。
周囲から変人扱いされているヴェンに魅かれ、毎朝ヴェンの行動を観察するのがノエルは楽しみで仕方なかったのだ。
授業が終わった後、誰もいなくなった教室でノエルはヴェンに問いかけた。
「なんでそんな森の外に興味あるの?」
ノエルの言葉に驚いた表情をするヴェン。
自分に話しかけてくる人なんていたのかと疑うような表情だ。
それでも『森の外』という単語にワクワクしたのか、表情はパっと明るくなった。
「森の外には楽しいことが沢山あるんだ!」
「それだけ?」
ノエルは呆然とした。
もう少しまともな理由があると思っていたからだ。
「君、名前は?」
ノエルのことなんて気にせずに、今度はヴェンが問いかける。
「僕はノエル。ヴェン、君のことはよく知ってるよ」
「おぉ。それは光栄だ。ところでノエルはなんでオイラに話しかけたの?」
ヴェンはニコッと笑いながら言った。
顔には小傷が沢山あり、髪の毛はボサボサの茶髪。
服は薄汚れたチェックのシャツに緑色のズボンを履いている。
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