第一章 始まり

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「ヴェン! こんな時間までどこ行ってたんだい!」 大声で怒鳴りつける小太りな女性。 「ごめんないさい、マーガレットさん」 「すぐに飯の支度しな!」 家の中には丸テーブルが一つと椅子が三つ並んでおり、床には小さな机が一つだけ置かれていた。 キッチンは割と手狭でヴェンは慣れた手つきでご飯の支度をする。 そこにトボトボと歩いてきた子供が、ヴェンの服を引っ張る。 「ヴェン、一緒に遊ぼう」 子供はヴェンの服を何度も引っ張り、手に持ったブロックで遊ぼうとヴェンを誘っていた。 「ごめんねトム。ご飯食べてから遊ぼうね」 ヴェンの言葉に納得したのか、コクリと頷きトムは部屋に戻っていく。 今日のご飯はスープにそしてマーガレットさんが買ってきたお肉を焼いた。 そして丸テーブルにはパンを並べ、それぞれの椅子の前にお皿とスプーン、フォークを並べる。 床にある小さな机がヴェンの特等席だ。 丸テーブルにはマーガレットさんに息子のトム、そしてマーガレットさんの旦那のジェイさんが座る。 ヴェンはこの家に住まわせてもらっており、代わりに家事やトムの世話をしていた。 お小遣いなんてものはないし、贅沢は何一つ出来ないが、住む家と服、そして食事があるだけでもありがたい事だと思っていた。 「ガシャン!」 振り返った時にヴェンの肘がコップにあたり、床に落ちる。 その衝撃でコップは割れ、破片があたり一面に飛び散った。 「お前何やってんだ!」 コップが割れた音を聞いて、ジェイさんが奥の部屋から飛んできた。 そして床に散らばったコップの破片を見て、状況を理解した後、ヴェンの顔を思いっきり殴り飛ばし、罵声に暴力を加える。 だが、ヴェンにとってこんなのは日常茶飯事だった。 すみませんと何度も頭を下げ、相手の気持ちが落ち着くまでただただ耐え続けるのだ。 こんな日々が幼い頃から幾度となく繰り返されていた。 ジェイさんの怒りが収まるとヴェンは床の破片を片付ける。
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