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レナエル――本名、白川レナは、同じ病棟の女の子だった。レナも幼い頃から入院していて、僕の事を知っていたという。
僕の記憶にはなかったが、一度会った事があるらしく、それ以降ずっと気にしていたそうだ。
ただ、レナは内気な少女で、話しかけようとしては何度も失敗していたらしい。
僕の情報は、切っ掛け作りの一貫としてナースが教えていたようだ。
そして、月日は流れ、あの日が来た。ナースから僕の状態を聞いたレナは、励ましたい一心で僕のところへ行ったと言う。
そして、その記念すべき一日目、僕が見事に誤解した。そう、彼女を天使だと思い込んだのだ。
思い込まれては否定できなかったのだろう。レナは天使の振りをすることになり、そのまま僕の部屋に通い続けた。
彼女はずっと、白い嘘を吐いていたのだ。
因みに、ナースは全ての事情を知っていたらしい。秘密にするよう、口封じまでされていたとか。一時間だと約束させていたのは、神ではなくナースだったのかもしれない。
同じ病棟という事は、レナも重病患者だ。
しかし、彼女と僕と違うのは、彼女の病気が治らないということだった。死病だったのだ。
話の結末は、想像通りだった。そうであって欲しくないと願いながら、叶わなかった。
僕が手術を受ける数日前に、レナは亡くなっていた。幸せだったとの言葉を残して。
その時の彼女は、とても満足気な顔をしていたそうだ。
「レナちゃん、雪音くんと話せていつも嬉しそうだったわ。ありがとう雪音くん」
ナースに微笑まれ、レナエルの笑顔を思い出した。白布を纏った白い肌、美しい黄色の髪、透き通った青い瞳。全てが鮮明に思い起こせる。
「……僕、レナの分も一生懸命生きます。頑張り続けます。頑張って生きていきます……」
僕にくれた全ての言葉と時間を持って、この先も懸命に生きていこう。
本物の天使になったレナに、安心して貰えるように。もう、泣かせないように。
僕は、生きる。
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