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「……なあぽめ。ずーっと疑問で仕方なかったことがあるんだけど訊いていい?」
「なんだよ?」
「なんだその超絶可愛い見た目で!そんなドスのきいたひっくい男性ボイスなの!?どっかのカードゲームの社長そっくりなんですけど!?」
そうなのだ。某電気ネズミみたいな可愛い声じゃないのだ。なんでたか、超絶ドスのきいた男性の声で喋るのだこの犬は!
「あぁ?俺様のこの声が気に食わねぇってのか!?なんべんも言わすんじゃねぇ、俺は元百獣の王だぞ!このクソガキが!」
しかも滅茶苦茶、クチが悪い!
百獣の王というか、どっちかというと完全にヤクザである。
「俺だってなあ、好き好んでこんな姿してるわけじゃねぇんだよ!くそっ……なんでサバンナでハーレム築いてウハウハしてた俺様が、転生したらこんな姿になっちまうんだ。しかもメスだしっ!」
「メスだし、お前子供産んでるよな。去年二歳で」
「仕方ねーだろ本能に逆らえなかったんだからよおおお!本当はオスなんぞに興味はねぇのに……ちっくしょう……!」
まあ、相手のポメラニアン(♂)も、こいつの本性は知らなかったんだろうから仕方ないよな、と思う僕である。なんといっても、こいつがこんな声で話すというのを知っているのは僕一人しかいないのだから。
ポメラニアンのぽめ(♀)は。天下絶世の美人わんこでありながら、中身はオスライオンである。しかも結構俺様な性格である。ていうかオッサンである。なんでも本人いわく、神様の機嫌を損ねて罰を受けた結果、メスのポメラニアンに転生してしまった――らしい。なんだそのラノベ的展開は、とツッコんではいけない。なんせ、そのあたりの記憶が本人(本犬?)もうろ覚えだからである。
「ていうか、お前なんで僕にしか口をきかないんだよ。姉ちゃんに散歩連れていってって頼めば良かったじゃないか。喜んで撮影中止にしてくれたと思うんだけど?」
まあ、そのイメージブチ壊しの声でびっくりはされるだろうが、とは心の中だけで。
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