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「お前の姉ちゃんは面倒くせぇだろうが。コントロールきかねーし、俺のこと猫っ可愛がりはするけど人の言うこと素直に聞く性格とは思えねー」
「まあ、それはそうだけど」
「それにな。我が家でお前が一番ヒエラルキーが下だから。奴隷にするには丁度いいだろうが」
「奴隷!?!?え、僕お前にそんな風に思われてたの!?」
しれっと言われた言葉にさすがにショックを受ける僕。確かに敬われてないなとは思っていたが。
「おう、我が家の順位は上から順に、母親>俺様=姉>父親>お前だ」
おう、見事に最下位である。ていうかお父さんの順位も低くて草生えそう。
まあ、どこの家も結局強いのは母親。はっきりわかんだね!
「クソッ。お前の姉貴が足止めしてくれたおかげで要らねー時間を使っちまった。さっさと行くぞ散歩」
そしてぽめは、当たり前のように僕に命令するのである。ふわふわのポメ足でつんつんしてくる様は可愛らしいが、態度は非常に横柄だ。
「今日の目的地は、三番地の外れの竹藪だ」
何故なら僕らの散歩コースは――必ずぽめが決めるのだから。
そう、ぽめが散歩に行きたがるのは、普通の犬と同じ理由ではないのである。
ぽめは、可愛く賢く、ただ喋るだけの犬ではない。ある領域において、とんでもない技量を発揮する――スーパーチート犬なのだ。
***
「あのさ……ぽめ。僕はちょっと幽霊が見えるだけの一般人なんだけどさ……?」
可愛らしいポメラニアンを連れてやって来るべき場所とは思えぬ――この、鬱蒼と繁った竹藪。
町外れのこの場所は、昼だというのに妙に薄暗い。古い一軒家が川沿いにぽつんぽつんと立ち並び、その一画だけ何故か切り取られたように竹藪になっているのだ。空き地であることは、ボロボロに朽ちた看板が立っていることからもよくわかる。売却、の文字はすっかり掠れて読みづらいし、錆びだらけの看板は今にも朽ちて折れそうになっているが。
「それでも、ココがやばいのは知ってるんですけど?」
「ほう?どうやべーんだ?」
「軒嶋町の藪知らず。小さな竹藪なのに、何故か入った人間が軒並み行方不明になるって有名な場所。この近隣に住んでる人間ならみんな知ってるよ、ココだけは絶対に入っちゃダメだって……」
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