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噂ならいくらでもある。その昔、ここには豪族の屋敷が建っていたが、トチ狂った父親が奥さんも長男次男も使用人も皆殺しにして首を吊ったらしい、とか。
もしくは此処には昔邪神を祀る村があって、洪水で村が沈んだ後祟りが起きて、それを名のあるお坊さんがどうにかこの地に封印したらしい、だとか。
とにかくよくわからないけれどこの場所は竜脈だとか地脈だとか、そういうのがすっぱり途切れてるから足を踏み入れたら危険な禁足地だとかなんとか――。
「悪い噂はいくらでもあるし、実際何人もいなくなってるのは確かだ。お前、まさか此処に入るとか言うんじゃないだろうな?やばいよ、流石に死ぬって!!」
僕が慌てて言うと、ぽめは。
「お前本当に大袈裟だなぁ。此処にいるのはそんな力の強い悪霊なんかじゃねーよ、ばーか」
と、なんと欠伸をしながら宣うではないか。そう、この可愛い可愛いポメラニアン。犬のくせにがっつり幽霊が見えるし祓えるという謎スペック持ちなのである。
「行方不明者……つーか死者が出てんのはマジだろ。実際そのへん四十人くらいふよふよしてんな」
「よ、四十人っ!?なんだよそれ呪われすry」
「話は最後まで聞けやガキが。……その竹藪な。竹が生えまくってるせいで全然足元見えねーけど。実は土地の真ん中にでけぇ穴があいてんだよ。すり鉢状にな」
「……はい?」
「だから、何も知らずに入ると足元見えないままずぼっとハマってずり落ちるんだ。かなり深いし、すり鉢状になってっから這い上がれない。で、そのまま怪我と飢えで信じまうってわけだな。沼みてーになってっから体温も奪われるし衛生的にも良くなさそーだし」
え、マジで?な僕である。
竹藪の真ん中に、穴?それでずり落ちて死ぬって――それってつまり、事故死ということ?
「ちょ、ちょっと待ってって。でもさ、今のご時世みんな携帯電話持ってるよ?落ちたって携帯電話で連絡すれば、助けくらい呼べそうなもんじゃないか?それとも電波も届かないくらい穴が深いの?……あ、いやそうなら落ちた瞬間に飢える前に即死してそうだよな……」
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