ごーすとばすたー・わんこ!

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 なんでまだ竹藪に入ってもいないのに、穴が空いてることなんてわかるんだよ、なんてことは言ってはいけない。  このワンコときたら、霊能力に加えてばっちりサイコメトリ?透視?とにかくそんな力もお持ちなのである。遠目から見たって壁を介していたって向こう側に何があるのかわかっちゃうのだ。――信じられないことだが、残念ながらぽめのこの能力を毎回目の当たりにしている僕からすると、今更理由を問うだけ野暮なのである。 「強いて言うならソコが幽霊の仕業だな。誰かが穴に落ちやすいように誘導した挙げ句、霊障起こして助けを呼べねーようにしてる奴がいる。そいつが死者を増やしてる原因だ。つーことで、今回はそいつを祓うぞ」  ぴん、と尻尾を立てるぽめである。 「一匹でも多く悪霊祓いをする。ムカつくが……カミサマのご機嫌取って、まともな転生先を約束してもらうにはそれしかねーかんな」  そう、ぽめが悪霊をサーチしては散歩の名目で僕に連れ出させている理由。  それは、悪霊祓いを繰り返すことで、ぽめに天罰を与えたというカミサマに償いをするため。そして、再びライオン(♂)に生まれ変わるためなのだという。――その天罰を受けた理由も朧気にしか覚えていないのに、償う手段だけは生まれた時からわかっていたのだそうだ。自分はライオンの生まれ変わりであり、悪霊祓いの力を秘めた特別なワンコであるのだと。 「それで、どうやって悪霊祓いするんだ?今日はお前が何も言ってないから、僕もなんの準備もしてないけど」 「この程度なら準備なんていらねーよ。見てろ」  何をする気なのか。見守る僕の前でぽめは――竹藪に向かって突然、きゅうきゅうと甘えるような声で鳴き始めた。鼻をひくつかせ、目尻を下げ、それはそれは寂しそうな声で。あれだ、スーパーの前で繋がれてご主人様を待っている時の犬の声である。  すると。 『私を呼ぶのは、誰……?』  それはぼろぼろの制服を着た、女子高生だった。  ひいっ、と僕は思わず声を上げてしまう。恐らく彼女も竹藪の中の穴に落ちて死んだ一人なのだろう。制服は泥だらけの砂だらけ、あちこち破れて血が滲んでいる。餓死したのか、頬は恐ろしく痩け、手も足もガリガリに痩せ細ってしまっている。まるで骨と皮だ。
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