ごーすとばすたー・わんこ!

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――な、なな何回見ても怖い!悪霊怖いいいい!  僕はぽめのリードを握ってガクガクブルブルと震えていたが。少女の悪霊は、僕には一切感心を示さなかった。見ているのはぽめだけだ。 『わあ……』  ぽめに気づいた少女が、ほんの少し嬉しそうに顔を綻ばせる。 『かわいい、わんちゃん……。おまえが、私を呼んでくれたの?』  少女の言葉に答えるように、ぽめは千切れんばかりにしっぽを振って見せた。必殺!ぽめの“尻尾を振る”攻撃!+“鳴き声”かーらーの“甘える”!ただでさえ、ワンコ界最強の美貌を持つぽめ、その全力の“色仕掛け”である。少しでもわんこが好きな人間が――落ちないはずはないのだ。  そう、それが悪霊であっても関係なく。 『さ、触れない……!』  ぽめのふわふわの毛を撫でようとした少女は――自分の手が透けてしまうことに気付いてがっくりと膝をついた。あ、幽霊に足がない、というのは迷信である。念のため。 『せっかくわんちゃんが私を呼んでくれたのに!寂しい私に気付いてくれて、私に会えるのを喜んでくれてるのに!!触れない……ふかふかできない……!わ、私が幽霊だからだっていうの……!?』 「くぅん……」 『あああ!そんな泣きそうな顔をしないで……わんちゃんにそんな顔されたら私、私……ああ、体が欲しい……生きた体がっ…!!』  ぽめ、の愛らしさにノックアウトされ、モフれないとに絶望した悪霊。  彼女が導きだした答えは。 『そうだ、成仏しよう』  ちょっと待て、“そうだ、京都に行こう”、みたいなノリでそれっていいの!?  ずっこけそうになった僕の存在を完全にスルーして――少女の体がどんどん上へと上り始めた。透明になっていく身体。満足そうな少女。えええ今まで悪霊として人を死に追いやったりなんたり頑張って活動してきたのにそれでいいの!?とか突っ込みどころは満載だったが。
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