47人が本棚に入れています
本棚に追加
僕が連れているアンドリューに、第二ソプラノの子たちは、興味津々のまなざしを向けた。
皆に対し、ごく簡単にアンドリューを紹介してから、僕は、音取りをしていたトニーにピアノの席を空けるように言う。
パート練習用の、ごく小さな古いアップライトピアノだ。
見よう見まね程度だったが、僕は、その頃、ピアノを少しばかり弾けるようになっていた。
ポンポンと、軽く慣らすように両手の指で鍵盤を叩いてから、僕はアンドリューに、
「『ホシアンナ』知ってる?」と訊ねた。
アンドリューの表情が、パッと明るくなった。
まるで、彼の髪色みたいに。
ごく短い前奏。
歌の始まりで、僕は息を吸って止め、アンドリューに視線を合わせてやる。
するとアンドリューは、流れるようにそれに応じた。
――それはまさに。
クリスタルのトランペットだった。
空気が、時間が。
はりつめて結晶し、そして反響し、きらめく破片が降り積もる。
その時。
君は九歳、僕は十一。
最初のコメントを投稿しよう!