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「天使と平和」待降節第二主日
<二本目のろうそくは「天使のキャンドル」
意味は「平和」
天使たちは「地には平和」と賛美する>
――出逢ったその日から。
僕の「場所」は、君に奪われるのだと分った。
でも、その「場所」が、所詮はかりそめのモノにすぎないことも、すでに知ってはいたんだ。
十一歳というのは、「ボーイソプラノ」のソリストという時間が、それほど長く続かないものだってことぐらい、十分に理解できる年齢だ。
アンドリューの声を聴いた瞬間。
自分の歌は、もう「終わった」んだと分かった。
だから僕は、その足で指揮者の元へと向かった。
彼をまっすぐに見上げ、僕は言った。
「クリスマス礼拝は、アンドリューにソロパートを?」
不意を突かれ、指揮者は口ごもる。
だが、すぐに、
「今年は……君が歌いなさい、ミスタ・ローレンス」と、静かに告げた。
彼は僕から、すこしも視線をそらさなかった。
言葉より、そのことの方に、僕は彼の誠意を感じた。
僕の十二の誕生日。
最後のクリスマス礼拝でのソロは、つつがなく終わった。
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