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その細い顎を掴んで振り向かせると、僕は彼にくちづけた。
官能と懐かしさと、せつなさがないまぜになった、ひどく甘いくちづけだった。
「……なんだか、犯罪者みたいな気になるな」
キスの途切れ目に、僕は思わず洩らす。
「どうして?」と、水色の瞳が僕を見上げた。
「僕はもうすぐ、三十になる……ティーンの少年とキスをするなんて」
「ぼくだって……もう二十七だよ。十七じゃない」
アンドリューが、さらにまっすぐ僕を見つめる。
「ひょっとして、ぼくの身体が、心配?」
「ああ」
僕は素直に、そう認めた。
「ぼく、ぼくだって……こんなこと……」
アンドリューが、不意に感情を爆発させる。
「こんな風に生きていて、なんになる? ぼくの『時』だけ進まないんだ。きみに追いつけない。最初から、きみは、まるで大人みたいで、ぼくのずっと遠くにいたのに、なのに、これじゃ……」
僕はアンドリューを抱き寄せて、そっと名を呼んでやる。
彼の瞳から涙が零れ落ち、スラックスの腿を打って雨だれの音を立てた。
「…きみと、ひとつにもなれないままで。ぼくは…こんな。ローレンス、ローレンス、いなくならないで、ぼくを置いていかないで、ひとりにしないで」
「おい、ひとを殺すなよ、アンディ。さすがに、まだそんな歳じゃない」
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