いつか目覚めた朝に(最終話)

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* いくどめかの待降節。そして、クリスマスが巡りきた。 そしてまた、報せが届く。 その年、アンドリューの父親から指定された日はクリスマスの当日。 許されたのは、その一日だけだった。 ――結局、アンドリューの「翼」というものを、僕は一度も見ることはなかった。 それが本当のことだと、当然のように信じているアンドリューとその父親のせいか、「そのこと」に対する違和感のようなものも、僕の中で次第に薄れていた。 むしろ、僕は。 それを「見てみたい」とすら願うようになっている。 もし本当に、そんなものがあるのだとすれば……。 たとえその「翼」が。 アンドリューの寿命を損なわせる元凶なのだとしても。 彼にこんな人生を強い続ける理由だとしても―― アンドリューが、僕の来訪に立ちあがってドアを開け、出迎えることができなかったのは、その年が初めてだった。 彼はヘッドボードに背をもたせかけ、ベッドの上に座っていた。 「ローレンス。誕生日おめでとう」 歩み寄る僕を見上げて、アンドリューは開口一番に言った。 礼を言う僕に、アンドリューが続ける。 「ねえ、ぼくたち、もしかして、クリスマスの日に一緒に過ごすのは初めてかな」 「そのようだ」と、僕は短く応じた。 そして枕元の椅子に座り、アンドリューの頬を肩を、そっと撫でた。 そんなきづかわしげな僕の様子に、アンドリューは微笑し、 「こんどのは、あまりいい治療じゃなかったみたいだ……ちょっと、きつかった」 と、ふざけるようにこぼす。
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