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その振舞いがあまりにも健気で胸が詰まってしまい、僕は言葉もなかった。
すると、ふと思いついた風に瞬いて、アンドリューが、
「きみ、いくつ?」と訊ねる。
はじめて会った時を思い出した。
たしか僕が、彼にそう訊ねたはずだ。
「三十三になった」と、僕は答えた。
「そう……」
アンドリューが噛み締めた。そして、また微笑んで、
「誕生日おめでとう、ミスタ・ローレンス」と続けた。
アンドリューに「ミスタ」などと呼ばれたのは、久方ぶりだった。
以前は、「爺さんになった気にさせられる」などといって、それを拒んだ。
だが。
「……たしかに、もう十分、『ミスタ』が似合う歳かもしれないな」
そう言って自嘲気味に、僕は短く笑う。
「だって! ローレンス」
アンドリューが、明るくはしゃいだ声を上げた。
「きみさ、絶対に呼ばせてくれないだろう? 名前」
「ああ……名前はダメだな、絶対に」
僕はすました顔で言い返してやる。
「ひどいよ」
アンドリューがふくれ面をしてみせた。
そして僕たちは、ひとしきり笑う。
午後の日があっという間に傾いていった。
暮れなずむ部屋で、僕たちは、あのキャンドル・リースに火をともす。
今年はいちどきに、四本すべてに――
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