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そのクリスマスの後のこと。
残念ながら、聖歌隊に「ソリスト」の代わりはいても、「リーダー」の代わりはいなかった。
まとめ役としての僕は、まだしばらく隊に必要とされていた。
「どうしても」と望まれたから、リーダーとして隊に足を運んだけれど、僕はもう、歌いはしなかった。
歌わない僕を、哀しそうに見つめるアンドリューの水色の瞳が痛かった。
そして、次のリーダーにトニーを推挙し、僕は聖歌隊を辞めた。
僕の世界は変わった。
歌以外の愉しみも、世の中にはあると知った。
健全なものも、やや、そうではないものも、どちらも。
制服を着る学校に上がり、ぐんぐんと背が伸びる僕を、少女たちが眩し気に見つめるようになる。
可愛らしい女の子と、映画やコンサートや、ちょっとした盛り場や、そんなところに出掛けるのは、正直、自尊心をくすぐられる悦びがあった。
でも――
結局、僕は歌うことから離れられなかった。
たとえば、エレクトリックギターやらロックミュージックやらに傾倒する友達のバンドでボーカルをとるとか、そんなこともできたかもしれない。
けれど僕は、またコーラスに戻っていった。
僕が、地元の教会でソロをとっていたことを知っているひとはなぜか多くて、あるコーラスグループから誘われたのだ。
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