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目玉焼きを、そのままご飯の上に乗せ、醤油を適当に掛け、口の中へと掻き込む。「あら、お行儀悪い。女の子なんだからもう少しお上品に食べなきゃ」と、眉間に皺を寄せて言う母の言葉に、「そうしたいけど、見てよっ、この寝癖……。直すのに時間掛かりそうだから慌てて食べてるの」と返した。そんな私の様子に、父と母は、顔を見合わせて「すっかり女の子になっちゃって」と感心気に呟く。
ーー女の子って、私も、もう高二だし、流石に寝癖を直さないと恥ずかしいじゃない。
心の中でそう返し、颯爽にご飯を食べ終わらせ、洗面台へと急いだ。
「……よし、こんなもんかな」
寝癖直しのスプレーを掛け、肩より少し長い黒髪に何度も櫛を通した後、鏡に映る自分を見て一人呟く。
なんとか自分の納得が行く程度には、寝癖も治まり、髪を気にしつつもリビングへと戻ると、朝のニュース番組の終わりにやる占いコーナーが、本日の運勢を発表している所だった。
「ーー最下位の乙女座の人、白のものを身に付けていると良いことがあるかもしれません。では良い一日を」
ーー乙女座、私だ。
自分の星座を言葉にしたお天気お姉さんの声に、思わず急いでいた足が止まる。特に占いを信じている訳ではないが、最下位だと、なんだか面白くない。
「陽愛、最下位じゃないか。お父さんの白のハンカチでも貸そうか?」
「うーん……いらない。それよりお父さんっ! 早く行かないとバスの時間遅れちゃうよ?!」
「おうっ、そうだそうだ。お母さん! いつものネクタイどこかなー?!」
「もう、今日は先に行くからね、お父さん! じゃあ、行ってきまーす!」
父の支度がまだ終わっていない所を見ると、そう直ぐに家を出れる様子ではない。「行ってらしゃい、気を付けてね」と、父と母が言う声に、もう一度、「行ってきます」と返し、慌ただしく、玄関を出て行った。
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