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本当なら、彼氏と一緒にうっとりしながら腕を組んで歩いていたはずなのに。
悠成の歩調は早くて、眺める、というより通り過ぎる、だ。
あーあ、なんでこんなことになったんだろ。
せめて、クリスマスが終わるまで隠し通してくれたらよかったのに。そしたらこんなに惨めな気持ちにはならなかったかもしれない。
アイツは今頃、二股の本命彼女と一緒にケーキでも突ついているんだろうか。
「くそぉ」
悔しさに唇を噛めば、ライトアップされた景色が滲む。
こうなったら、とことんデートを楽しんでやる! 相手弟だけど!
理想のデートコースの予習はバッチリだ。
悠成には悪いけど、全部付き合ってもらう。このデートコースをきちんと成仏させなければ!
決意を新たに前を歩く悠成へ小走りで追いつくと、ガッと腕をつかんだ。
「うわ、なにすんだよ」
「腕組もう、悠成」
「なんで」
怪訝な顔の彼を見上げ、私はキリッと「デートだから!」と宣言する。
彼はやれやれとため息をついて、少しだけ歩調を緩めてくれた。しがみつくようにつかまっていた腕を自然に組み直して、並んで歩く。
「デートとして付き合うのはいいけどさ、姉貴──」
おおっと、いけない、忘れてた!
「今日は名前で呼んで!」
「えぇ……」
「恋人のつもりで!」
「…………いいけど」
渋々了承してもらい、「と、智花」と吃りながら呼ばれる。
眉間にもの凄いシワが寄ってるけど、見なかったことにしよう。
「なあに?」
「あー……俺じゃ慰めにならない、よね?」
「え、なんで? いいよ?」
さっきも言ったけど、暇な人間アンタしかいなかったんだよ。
それに、毎年一緒にいるのに今更だよ。
……なんて、失礼なので黙っておく。
「今日は悠成が良かったの!」
組んだ腕をギュッと抱きしめると、眉間のシワをますます深めて「マジか」と呟かれる。
どうせ、迷惑だとでも思ってるんだろうけど。
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