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1.
クリスマスに彼氏に振られるなんて最低だ。
「だからって、弟を呼ぶことないだろ……」
「だってアンタしか暇な人間いなかったんだもん」
イルミネーションに彩られた夜の駅前。
待ち合わせに現れた弟は、不貞腐れながら開口一番文句を言った。
彼氏に「クリスマスは豪華なデートしてみたいね」って言われて、大喜びでバイト代をつぎ込みホテルのディナーを予約した。なのに、直前で二股が発覚しお別れ。
折角予約したし、キャンセル料が勿体無いので弟を召喚したのだ。悲しい。
「女に全部任せるなんて、そいつ男としてどーなの」
「私が好きでやったんだもん……初彼氏と、初クリスマスデートだったんだもん……」
「……あーあ、めんどくせ。今日は一日寝てようと思ったのに」
ブツブツ言いつつ、律儀に待ち合わせ時間を守り、指定したドレスコードのスマートカジュアルで来てくれる優しい弟。
普段、だるだるの部屋着しか見ていないせいか、可愛いシャツにセーターと綺麗なジャケットを羽織っている彼は新鮮だった。
コートもそれ、見たことないやつだ。
「服、わざわざ買った?」
「これくらい持ってるし。もう大人だし」
ポン、と頭を軽く叩かれ、歩いていってしまう。
私はその後ろを小走りで追いかけた。
電球が巻き付けられた街路樹が延々と続く道路を歩く。
この先に定番のデートコースである大きなショッピングモールやホテルなどの施設があるのだ。
すると、私たちの横を通り過ぎた女性が数人、彼を振り返った。
背が高くて、綺麗な顔立ち。鼻ぺちゃな私とは似ても似つかない美形の弟は、どこにいても注目を集めてしまう。
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