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「ああ、でも、しつこくて激しすぎるから身がもたないって相談なら、アキにしても無駄だぞ?あいつも毎晩大変そうだからな」
あっさり他人事のように言っているけど、えーと、それって。
しかも、毎晩なんだ…。
じゃなくて!
「そんなんじゃねぇし!別にそんな……」
ただちょっと、極道の男を恋人にするって、どう覚悟を決めればいいのかって聞きたかっただけで。
ベッドの上のどうこうなんて、そんなの。
宇賀神が、急に黙るから。
そして、どこか、優しげな顔をするから。
言うつもりのなかった本音が、ポロリと口から零れ落ちた。
「エータが、俺の身体、好き放題変えてくから」
突っ込むほうは、そんなこと、全然気にもしないんだろうけど。
突っ込まれるほうは、男なのに、変なとこで快楽を得るようになって、気持ちだけでなく身体まで丸ごと、そのひとのものになっていく。
それが、すごく、怖い。
「もし、あいつが急にいなくなったら、俺、どうなっちゃうのかなって」
こんなに、全部があのひとのものになってしまったのに。
急にそれを喪ってしまったら。
「そうか、お前は、高原が俺のために死ぬのが怖いのか」
ズバリと核心を突かれた。
ハッと我に返ったけれど、口から出た言葉はもう戻ってこない。
勝手にこんなことを言ってしまって、高原に何か迷惑をかけないだろうか。
恐る恐る視線を向けると、宇賀神は、酷く真剣な顔をしていた。
少し、言葉を探すような沈黙。
そして。
「こんなことを言っても、気休めにしかならないかもしれないが、な」
俺には過去に、俺のために命をくれた人がいる。
宇賀神は、そう言って、また少し沈黙した。
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