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訊かれて桜田は頬を上気させる。
「な、何訊いてんだよ、んなこと言えるか!」
「知りたい…お前を満足させられてるか」
ほら、まだこんなに熱を持てるなら、足りてないんじゃないのか?
ゆるりと撫でられるそれが、そのソフトな触れ方にさえ、じんわりとまた反応してしまう。
桜田は太腿を交差させるように閉じて、その熱を誤魔化そうとした。
「あ、んたが…さわる、から…」
「もっと欲しいか?」
これ以上はしつこいかと思ったんだが、違ったか?
耳朶をそっと甘く噛まれる。
濡れた感触が、そのまま耳の輪郭を辿った。
「あっ…」
思わず漏れた声に、高原の吐く息の温度が上がったのがわかった。
「崇史」
その温度の上がった息の合間に名前を呼ばれたら、もうダメだ。
さっき、これ以上はもうムリ、と思ったのが嘘のように、自分の身体が昂るのがわかる。
「なんで…」
掠れた声が、思わず零れた。
「お前が俺を好きだからだろう?」
そして、若くて健康だからだ。
「まあ、まだ俺は足りなかったからな、しつこいと思われないで済むならラッキーだ」
高原は、桜田の首筋に舌を這わせながら、もう完全に肉食獣の瞳だ。
自分はオッサンだとか言いながら、どんだけ絶倫なんだよ、と桜田は思う。
このままじゃホントに、高原なしではいられない身体にされてしまいそうだ。
そんな思いが一瞬頭を掠めたけれども、それも、ほんの一瞬だ。
すぐに高原の与えてくれる快楽の渦に溺れて、何も考えられなくなって。
その背中で泳ぐ美しい龍に、ひたすら爪を立てるぐらいしかできなくなる。
例え、そのひとが、自分の知らない恐ろしい裏の顔を持っているとしても。
この行為がただそのひとが欲望を解消するためだけのものだとしても。
もう自分は。
この男の思う壺にはまって、きっと抜け出すことはできない。
「愛してる、崇史」
そんな甘い囁き1つで、簡単に堕ちてしまう。
「エータ、好き、俺も」
それでもいい、と思ってしまうのは、完全に中毒になっているからだ。
散々、桔平には、恋人は危ない男じゃないだろうな、なんて説教じみたこと言ってたくせに。
この男を、彼に恋人だと紹介したら、あの親友はどんな顔をするだろうか。
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