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シロを初めて見かけたのは、十五歳の夏の日。七人掛けシートの端から二番目に座り、わたしはぼぉっと、流れる景色を眺める。圧倒的な存在感の入道雲。午前中だというのに、恥じらいもなく高くから見下ろす太陽。ほんの少し開けた窓から吹き込む、ぬるくて強い風が、手元の問題集のページを、当て付けのようにパラパラと捲っていく。こんなの読んで、何になるの?誰か教えてほしい。 やる気が、見当たらない。文字を見る気も。開いた目を動かす気も、このうだるような暑さの中、息をする気さえも。 ときの流れは、とてつもなく遅い。毎日が四十八時間あるんじゃないかってくらい、遅々として進まないように思う。くたびれるだけのことを考えながら、また、ルーティン化した窓の外に意識を戻す。 古びた瓦の屋根、今にも倒壊しそうな小屋、煤けて色の変わった緑色の屋根。それから、ビニールハウス、ビニールハウス、ビニールハウス…。 ぎゅうぎゅうに肩を寄せ合った建物たちは、見ているだけで汗が吹き出てくる。のどかでも先進的でもない。中途半端な田舎の風景。 照り返しでぴかぴかに光っているそれらに影が差した気がして、空を見た。入道雲はいつの間にかもくもくと成長し、太陽を覆い隠そうとしている。 「最悪」 これはアレだ。ゲリラ豪雨の雲だ。ついてない。傘なんて、持ってきてない。
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