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軽やかなシャワーの音が、空気を満たす。緑たちが嬉しそうにその身を震わす。オレンジ色に染まったミストを浴びながら、銀髪の彼は振り返った。 「やあ」 気がつけば、足はここに向かっていた。ここ以外、行くべき場所を知らなかった。 「今日も暑かったな」 なかなか落ちない陽を見て少しだけ笑い、緑たちに視線を戻す。久しぶりに会ったからか、初めての時のように声が出ない。何て言葉を返せばいいのかわからなくってうつむき、みぞおち辺りをギュッと掴むと、間断なく続くシャワーの音と、脳に残る彼の声が重なって、とくとくと体の芯を伝い、おへその奥あたりに溶けていった。 シロの声は心地好い。 例えば、電車の規則的な振動みたいに。日々繰り返される心臓の拍動みたいに。毛布の中で聞く雨音みたいに。ふんわりくるまれ眠気を誘い、不安が少し解消される。大丈夫かもしれないと思えてくる。 「お入り」 顔を上げると、汗で額にはりついた前髪をかきあげるシロがいた。ちょっとびっくりした。 「わ」 「何?」 「シロって、汗かくんだ」 「当たり前だ。俺を何だと思ってる」 「…重要アイテム」 「ん?」 「何でもなーい」 わたしの秘密の重要アイテムは、超能力者だ。
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