アマンとの時間

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優しく、シトシトと雨が降り続いている。 もう一日半は降り続いている。 フキの葉が雨粒を何度も何度も弾いていて、 もう、飽き飽きしているようにも感じる程に。 昼間だというのに薄暗く、 ランプの炎が照らしているからなのか、 本人の火照りなのか、 頬をほんのり赤らめてアマンはもう一度聞いた 「なぜ自分と同じ苦労を望む人がいるのですか?それは正しいことなのですか?」 ギィーギィ、ギィーギィ。 所々黒く煤けた椅子をゆらし、 顎に蓄えた毛筆のようなヒゲを上から下へとなぞりながら、 キリカブは答えた。 「自分と同じ苦労を望む人は生涯、幸せにはなれないかもしれないね。」 アマンはもう一度聞いた 「その人は幸せにはなりたくないのですか?」 キリカブは答えた 「幸せ、その概念がおそらくねじれてしまっているのかもしれないね。」 アマン 「ねじれ? それはその人の本質とは別のことなんですか?」 キリカブ 「生きること、死ぬこと、病むこと、老いること。こんな言葉を 聞いた事はあるかい?」 アマンは少しムッとした。 自分の欲している返答とはあまりにもかけ離れていたからだ。 そんなアマンの心情を無視するかのように キリカブは続けた。 「 昔むかしにとてもとても、よく物事を考えた、ブッダと言う人がたんだ。 生きること、死ぬこと、病むこと、老いること、 もうすでに、人は存在しているだけで、この四苦を背負っていると言ったんだ。 なんだか悲しい気もするかもしれないね、 不思議な事のように聞こえるかもしれないけど、 よく、考えてごらん。 」 アマンは小さな憤怒のような気持ちを抑えられない。 「キリカブさん、 死ぬこと、病むこと、老いることはわかります。 生きることは苦なのでしょうか。僕にはよく わかりません。」 雨足は強くもなく、弱くなってもいなく変わらずフキの葉を叩いている。 キリカブがランプに手を伸ばし、そっと、 ランプの給油口を開けた。 その給油口の蓋を開ける音が甲高く響く。 キィー、キィー、キキ 蓋をコトリとテーブルの端に置き、 油をゆっくりと優しく注ぎならがらキリカブは口を開いた 「それは誰にもわからない事なのかもしれない」 アマンは下を向きながら何かを言いたげな顔をしている。 頬は大きくなったランプの炎のせいか先程よりも赤らめて見える。 沈黙が数十秒続いたあと、アマンは我慢できなかったかのように口から言葉が飛んで出た。 「僕は苦しみながら生きるのは嫌です! 」 「どうすればその四苦から逃れられるのでしょうか?」 キリカブはテーブルに数滴垂れた油を拭きながら 「、、、それもわからない事なんだよ。」 キリカブがそう答えた表情が少し前よりも緩やかになっているように見受けられた事がアマンの感情を逆撫でにさせる。 アマン「わからないって、、、」
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