2つのぬくもり

2/6
前へ
/6ページ
次へ
「お水、飲む?」  ベッドでぐったりしていると、彼はすぐにペットボトルの水を持ってきてくれた。 「ありがと、飲む…」  私はそれを受け取って、勢いよく飲んだ。ああ、喉がカラカラだ。部屋の空気も乾燥していて不快だ。 「もう少しベッドで休む?それか、一緒にお風呂入ってもいいけど」 「少し疲れちゃったから、ここでごろごろしよ…。お風呂は…簡単にシャワーで済ませるから」 「そっか。じゃ、失礼して」  彼はペットボトルを近くのテーブルに戻すと、私の隣で横になり、体をぴたりと密着させて来る。そして、 「ん」  と言って腕を差し出してきた。腕枕をしてくれるのだ。 「…腕枕、いいって言ってるのに。腕しびれるでしょ?こっちが落ち着かないんだって」 「…といいながら、腕枕好きじゃん。してる時のほうが幸せそうな顔してるよ、ユリは」 「……」  彼は私のことをよくわかっている。“お前のことなら何でも知ってるんだ”と言わんばかりの表情をした彼に、悔しいような、複雑な思いがする。 「…まぁ、いいや。じゃあお言葉に甘えて」  私は彼の腕にそっと頭を乗せた。  ちらと彼の顔を見ると、彼が私の目を見つめてふっと笑った。   綺麗な顔だなぁ、と思った。  ちょっとゆるいパーマを当てている、ふわっとした茶髪。その茶髪の奥にはくりっとした可愛らしい瞳。同世代なのに、彼は私よりも童顔で若く見える。正直、うらやましい。私は年相応か、下手したら実年齢よりも老けて見られることもある。今日は久々にきれいにお化粧をして髪も巻いてきたけれど、普段は忙しすぎて、あまり身だしなみを整えることができていないせいだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加