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番外編②冬の幸せと雪うさぎ
天気予報では、夜から今朝方にかけて雪が降ると言っていた。天気予報に当たり外れもあるが、このときは当たりだったようで、今朝起きて外を見ると雪が数センチ積もっていた。
雪が降ることも、積もることも珍しくないが、今回の積もり具合から小さな雪だるまくらいは作れそうだ。
「……にしても寒い」
窓を開けずにいても、外気の寒さが伝わってくる。ぶるりと身体を震わせ、綾人はベッドに戻ろうとしたが、背後から体温と柔らかな生地に包み込まれた。
「……昂」
「起きたら綾人がいなかったからな。寒いだろ」
「うん。でも、今は暖かい」
柔らかな生地の正体は毛布で、昂と一緒に二人でくるまっている状態だ。
二人で外を見つめ、しばらく沈黙が続く。
「――雪でなにか作るか」
「え? なに突然」
「いや、なんとなく」
「変な昂」
「俺のこと変と言った悪い子にはお仕置きだな」
「なにそれ」
綾人の耳元で囁きながら、昂が唇で耳をちゅ、ちゅ、と啄むように弄ってくる。
「ん、もっ、くすぐった……ごめんって、昂」
「綾人からキスしてくれたら許す」
昂のお願い事に綾人は腕の中で向きを変え、少し背伸びして昂の唇に触れるだけのキスをした。
外に出て、「寒い」「冷たい」と言いながら、積もった雪で雪だるまではなく雪うさぎを作った。
手の大きさが違うせいで、小さな雪うさぎと大きな雪うさぎ。耳と赤い目は、クリスマスで飾ったリースにある造花のヒイラギで代用した。
「ベランダに置けば、すぐには融けないよね」
「それはそうだろう。部屋と違って寒いしな」
「俺たちと一緒で二匹だから寂しくないしね」
「二匹って……雪だぞ」
「いいの」
ベランダの手すりに、作った雪うさぎを置く。
これでよし、と綾人は満足気な表情を浮かべ、部屋に戻った。部屋の中から雪うさぎの様子を見る。
「うん。小さくて可愛い」
「綾人、ココア作っておいたぞ」
「ありがとう、昂! 見て、見て。あんな感じで雪うさぎ飾ってみた」
ベランダの外を見るよう昂に促す。
寄り添っている雪うさぎの姿に、昂は微笑んだ。そんな昂の横顔を、ココアを飲みながら綾人も微笑んだ。
「手すりにちょこんと乗ってるの可愛いよね」
「綾人が俺の上に乗ってるときみたいだな」
「~~~~っ、ばっ、な、なにをっ……!」
飲もうとした瞬間、ココアが入ったカップを落としそうになった。
顔を真っ赤にして、綾人は昂を睨みつけた。
「……ばか、ばか、昂のばーか」
「ごめんって。綾人が可愛いから思い出したまでだ」
「……ばーか」
「ほら、雪うさぎたちが見てる。仲直りのキスしよう」
「……それ、キスしたいだけだよね」
そう言いながら目を瞑る綾人自身、昂に甘いなあと思った。
落ちてくる影。唇が触れた瞬間、幸せが染み込んでいくようだ。
雪うさぎに見守られながら昂とくちづけを交わし、綾人は心の中でまた来年も作れたらいいなと願った。
おわり
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