0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は丸い筒を覗きこんだ。
「そこに狙いを定めたあとは引き金を引くだけで発射されるから」
「それにしても、あなたは随分と詳しいですね」
僕は冷静な主婦の女性に攻撃のベテランのような感覚を覚える。
「実は私、少し前まで向こう側の人間だった。この鉄道建設には怒りを覚えていた。
私もこの電車に向けて銃を撃っていた。しかし徐々にこの電車の乗っている人には危害を与える必要はない。鉄道建設と関係はないと思えてきた。それに私事なんだけど最近に結婚してこれ以上続けていてもしょうがないと思って足を洗った。だからあの人達にも目覚めさせてほしい」
「わかりました。やってみます」
僕は右肩に背負い込んだ。
ずっしり重いものが体にのかった感じだ。
丸い円を覗き込み丘の上が見えた。
「私が窓を全開に開けるからそれと同時に引き金を思いっきり引いて。チャンスは一瞬だからね」
僕は思いっきり引き金を引くと同時に体が後ろに強く引っ張られるように倒れこんだ
ドガーン。
轟音と共にミサイルが低い放物線を描いて丘の膨らみに命中した。
炎と煙が舞い上がった。
「あなた腕があるね。やった~。これで向こうの攻撃は静まると思うわ」
確かに一瞬にして銃声と轟音が止んだ。
『この電車は運転見合せしていましたが通常の速度で運行します』
電車が動き出した。
周りの車内の人が拍手をしている。
時計を見た。
このまま駅に着いて走っていけば間に合いそうだ。
僕は緊張感が緩み、脱力感が一気に全身にまわったように床に座りこんだ。
駅の改札に行き、そのまま全速力で喫煙所のところまできた。沢山の喫煙者の中で遠くからでもわかるぐらいの背の高いダークグレイのスーツ姿の男が笑顔で手を振っていた。
最初のコメントを投稿しよう!